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横林大々のブログ

小説家、横林大々のツイッターアカウントです。こちらでは横林の宣伝や雑記を掲載します。

『新宿』で『新宿』を壊した大森靖子 ~かけがえのないマグマ~

雑記

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・歌詞を見る派・見ない派

 

歌詞の凄い人に惹かれます。

 

よく、曲の歌詞を「見る派」「見ない派」で分けることがありますが、 僕からしたら、そのアーティストや曲によってギアを変えます。『でんぱ組』とかは歌詞見ないし、『槇原敬之』は超歌詞を見ます。

 

で、曲によって自分の中の最高の聴き方を探すのが一般的な歌の楽しみだと思ってたんですが、どうやら歌詞を見ないって人も多数いるようです。ユーミンの歌詞すげえとか、思わないのかなあ。『DOWNTOWN BOY』 とかヤバいぜ。切なくて泣くぜ。

 

そんな詞も重視するタイプの僕は、『鋭いフレーズ』を持つ歌手が好きです。

例えば僕の大好きな槇原敬之。『pool』という曲のサビで『氷イチゴの真っ赤な舌で笑ってた』というフレーズがでてきます。…これ、ヤバくないですか?

 

鋭いフレーズは『あるある』と『インパクト』を同時に与えます。かき氷を食べて舌がシロップの色になるというのは『あるある』、しかも夏の情景を想起させる『あるある』です。加えて『氷イチゴ』という倒置的な言い回し。かき氷という正式な名称があるのに、それを超える造語。この『インパクト』。なにより、笑ってたというのが切なさを引き立たせて…

 

…と、実はこの歌に関しては過去に記事を書いたので気になる方は見て貰えればと思いますが

 

 

このような詞をかける人が心から羨ましく感じる僕がいます。小劇場界で脚本家を名乗ってた時期もありますから、「そこでこのフレーズか! 」という羨望を向けてしまうのです。

 

『あるある』は『共感』、『インパクト』は『衝撃』と言い換えられます。この相対する存在を同時に与えてしまう言葉は、台詞にするとドぎつくても、曲にのせると不思議と耳に入ります。

『歌』ほど言葉を心へ届けるツールはありません。

 

今回紹介する『大森靖子』さんは、そんな『共感』と『衝撃』を鋭すぎるフレーズで心へ届けてくれる歌手です。

この人は、もっと世間から評価されてもいいよなあ、という思いで今記事を書きました。

 

 

 

大森靖子は『メンヘラ』じゃない

 

以下、大森靖子さんのプロフ。

 

弾き語りを基本スタイルに活動する、新少女世代言葉の魔術師。'14夏はTokyo Idol Fes、フジロックロックインジャパンに出演、音楽の中ならどこへだって行ける通行切符を唯一持つ、無双モードのただのハロヲタ。あとブログ。

(公式サイトより)

 

僕は彼女の書く詩が好きです。25歳の男が恥ずかしげも無く書きます、 大好きです。

言葉の選び方、使い方。その全部にグサグサきてます。たまりません。

なんかスゴい人の大喜利の回答を見てる気持ちになるんです。大森靖子さん、大喜利強いです、たぶん。

基本センスなんだけど、配置にクレバーも見え隠れするし。

 

ただ、説明だけでは、『色もの?』と思う人もいるかもしれないので、動画を何点か。

 

冒頭のディズニーランドってフレーズにビビる。アリなんだ。

 

最高のラブソング。コピーページにはならない。

 

 

あとは、好き嫌い別れるかもしれないけど、個人的に好きな動画を。

これも良い。

 

どうでしょう。結構、個性的に見えて曲は真っ向勝負って感じじゃない ですか?

歌詞は鋭利ですけど。

パフォーマンスに反してキャッチーなんです、歌そのものは。

あー、好きだわー。

 

でね。よく、大森靖子さんを説明する際に、『メンヘラ』って言葉を耳にするんです。彼女のパフォーマンスとか言動とかが先行して。

でも、僕は個人的に、その言葉で大森靖子を説明するのが大嫌いで。

まず、最近の『フラッションメンヘラ』に反吐が出るというのがある。
マジで悩んでる人もいる訳じゃないですか中には。その言葉を使うのって、実際は結構重い行為だと思うんです。だから、それで商売するなら大森靖子くらいのクオリティ引っ提げてこいよ、バーカって思っちゃうんですよね。覚悟いるよ、それ相応の。

で、もうひとつは、もちろん根の部分もあるけど、彼女はそういう部分を演じてる所があるんじゃないかって思う点。

 

このインタビューの中でこんな事言ってるんですよ。

 

基本的にラブソングは全部“愛してるあるある”だし、大喜利みたいなものだと思ってるんで。そこに対して、いかにうまい答えを出してやろうか、みたいなことですよね。だったら「私が今一番うまいっしょ?」って思ってる(笑)

 

『共感』と『衝撃』。この記事を見た時に、「あ、そりゃあ僕好きになるわな」と思いました。

こういう歌詞との向き合い方はクレバーな証拠だと思うんです。実際うまいですし、愛してるあるあるの大喜利。玄武、マイナス。

好き嫌いがあるにしても、この人が世に出ないのは、やっぱりおかしいなあ、と思っちゃいます。

 

 

 

・女性のシンガーソングライター、だれでも椎名林檎に似てるっていうの、やめませんか?

 

で、なんですが。

実は、この記事。ここからが本題なんです。

とりあえず、大森靖子さんという歌手の説明と、僕の大森靖子さんに対する想いが伝わったと思うので書かせてください。

 

本当、そろそろ、女性のシンガーソングライターをだれかれ構わず、椎名林檎っぽいとかいうのやめないですか?

僕、好きです。椎名林檎東京事変も。

でも、もうソロの女性歌手を椎名林檎に影響受けてるんでしょとかいうの、ダサいですよ、いい加減。

や、多分中にはいると思いますよ、影響受けてる人。いますもんね、ソロだったのにバンド組んだりする人。

大森靖子さんも大森靖子&THEピンクトカレフって形態でバンドしてましたし。

 

ただ、聞いてもないのにビジュアルとか雰囲気だけで『椎名林檎』っぽいっていうのはちょっと思考停止の気がするんです。

一度、大森靖子を人に勧めた時、『いや、でも椎名林檎の系統でしょ?』みたいなことを言われました。

系統だからなんだよ!それで聞かないのかよ!それ、もったいないって!でも、多分それで食指が 動かない人も一定層いるみたいで、これは僕ら世代の『呪い』のような気分にもなりました。

偉大すぎて、超えられない、という。

 

しかしです。もう椎名林檎デビューしてから何年経つんだよ。僕が小学生の時に『丸の内サディスティック』とか歌ってたんだぞ。

もう、その呪い、解いて良い頃合いじゃないですか。

だって、この大森靖子は、その『呪い』を解く、魔法のような『ある曲』を持っているんですから。

今日紹介したかったのは、そんな大森靖子の『新宿』という曲です。

 

 

 

大森靖子の『新宿』


『共感』と『衝撃』。

冒頭で、そんなことを書きましたが、本当に素晴らしい『共感』というのは、聴いてる人に、その実体験がなくても『体験した』と思わせる、 凄みがあります。

大森靖子の『新宿』は、その最たるもので、僕はこの曲を聞くと新宿に行ったことも無いのに、歌詞に出てくる彼女達を見たことがあるように錯覚してしまいます。

そして、『衝撃』という意味では、歌い出し一発目から出てくる『きゃりーぱみゅぱみゅ』でグッと掴まされる。大森靖子さんは固有名詞の使い方が上手で、その辺りも『大喜利が強いだろうな』と思わされる所以だったりします。

 

では、説明してばかりでも何なので、どんな曲か聴いてみましょう。

『新宿』は1曲目です。

(徐々に彼女を認めていくコメントに注目)

 

歌詞に出てくる少女たち。彼女が歌うと、不思議と嫌いになれません。

あの街をあるく

才能がなかったから

私 新宿が好き

汚れてもいいの

 

鋭すぎる。

 

僕のような地方出身者からすると、新宿というのは『東京』を象徴する街で。どの人の、どんな願いも叶えるスゴイ力があるものだと思っていました。

それくらい東京というのは力がある、魔法がある、と。

だけど、この曲を聞いて「そうだよな」って思ったんです。この歌に出てくるような『新宿をあるく才能のない誰か』だって、たくさんいるんだ、と。

 

女の子だけがもらえるポケットティッシュ

私のおまもり

汚れてもいいの

 

ポケットティッシュをすがるように、おまもりにしないと新宿を歩けない女の子たち。

 

僕の考えてた東京の『魔法』は壊され、その『共感』と『衝撃』に飲み込まれました。

 

 

 

椎名林檎の『新宿』

 

さきほど、僕はこの『新宿』に呪いを解く魔法があると言いました。

しかし『魔法』というよりは『現実』を突き付けてくるような鋭さの『新宿』。

いったいどういう呪いを解く魔法があるのかといえば、椎名林檎がかつて名乗ってた呼称にそのヒントがあります。

 

そう、それは『新宿系』という言葉です。

椎名林檎が新宿系と自作自演し、タイトルに『歌舞伎町の女王』とつけ、『群青日和』で『新宿は豪雨』なんて歌った事で、舞台装置としての『新宿』が生まれました。

それはギラギラと光るネオンに包まれ、多くの女の子のあこがれとなったはずです。

 

だけど大森靖子は、その舞台に憧れつつも主役に成れなかった子たちにスポットライトをあてました。才能が無くても新宿が好きな子に。


そこには椎名林檎の生み出した格好良い『新宿』はありません。現実としての『新宿』が立ちはだかります。おそらく新宿には語られないこんな子たちがたくさんいて、大森靖子は、そんな彼女らの存在を教えてくれている気がします。

 

憧れの『新宿』と、それに「よごれてもいい」としがみ付く本当の『新宿』。

この対比。椎名林檎が築きあげた新宿を大森靖子が壊したと言っていんじゃないかと思います。椎名林檎という『呪い』を解いた、魔法のような曲、『新宿』。

 

(実はその辺りは、大森靖子さんが最果タヒさんと共著した『かけがえのないマグマ 大森靖子激白』にも書かれていますので是非。この本も、すげー面白いです。

 

どちらも大好きですが、今夜は大森靖子の『新宿』の気分だなあ、と、そんな事を思いながら、この記事を締めたいと思います。

 

最後は『新宿』お気に入りの歌詞を見ながらお別れです。ザクザクくる鋭さ。

あの愛にうずくまる

才能がなかったから

私 新宿が好き

誰でもいいの